5.仲間たちの仕事づくり活動

1999年秋から私たちは新しい活動理念のもとに、野宿の仲間たちの「仕事づくり活動」を進めてきました。それは労働行政の無策の中、少しでも仲間たち自身の力で仕事をつくって、閉塞感に包まれた日常を打開していこう、というものです。この数ヶ月間、私たちは限られた力量を精一杯発揮しながら、バザー活動を中心に少しずつ「仕事づくり活動」を進めてきました(下表)。

▼主な「仕事づくり活動」の経緯

 
  日  付   活動内容    場  所
1999年
 11月21日(日) バザー活動 名古屋国際センター
 12月11日(土) 引っ越し作業 愛知県安城市
  →岡崎市
2000年
 1月23日(日)* バザー活動 名古屋市・栄、セント
ラルパークでのフリー
マーケット
 3月18日(土)
   19日(日)
    20日(月) バザー活動 名古屋市大須、平成
パーキングでのフリー
マーケット
 4月22日(土)
    23日(日) バザー活動    同  上
 6月10日(土)
    11日(日) バザー活動 名大祭(名古屋大学
      学園祭)
 6月18日(日) バザー活動 名古屋工業大学学園祭
 6月24日(土) チラシの
 ポスティング 地下鉄赤池駅周辺
 7月9日(日) チラシの
 ポスティング 名古屋市東区・北区

*準備作業をするも当日雨天中止。

 「仕事づくり活動」の経緯 


 1999年11月21日、初めての試みとして、某NGOの主催する名古屋国際センターでのイベントのバザーに仲間たちの店を出しました。売り物は多くの支援者から集められてきた新品・中古品の衣類や食器などで、約10人の野宿の仲間が参加しました。出店場所が不利だったにも関わらず、仲間たちの必死の(?)呼び込みもあって、かなり収益を上げることができました。これは仲間たちの「仕事」なので、売上から必要経費や今後の「仕事づくり」に使う積立金を引いた残り全てが、仲間たちで分配されました。
 この企画の成功に気をよくした私たちは、その後バザー活動を第2弾、第3弾と次々と打ってきました。中には商品の不足、客足の不調などによって収益が今一つのものもありましたが、全体としては順調で、徐々に恒常的な活動となりつつあります。
 また同年12月には、3名の仲間が「仕事」として引っ越しの手伝いに派遣されました。3名の中には高齢の仲間もいましたが、それぞれが競うかのように積極的に、重い荷物の運搬や部屋の掃除などの作業に従事しました。彼らいわく、「普段、何もしないでじっとしていると気分が落ち込んでくるけど、こうやって体を動かして汗を流すとスカッとする」「食欲もすごく増して元気になる。今日はいつもの3倍も食べられた」。確かに、1日の労働の後に手にした日当で、みんなで食べた夕食は本当にうまそうでした。
 数回行ったバザー活動の中でも、2000年6月10・11日の「名大祭」での出店は、参加した人数、収益ともに比較的規模の大きいものとなりました。十数名の野宿の仲間たちが参加し、多くの人出で賑わって、ひときわ多くの収益を上げることができました。仲間たちの努力もあって、衣類、食器、玩具など幅広く売れ、2日目の終了時にはほとんど商品がなくなってしまうほどでした。


 バザー活動の手法 

 たかがバザーと思われるかもしれませんが、この活動には野宿の仲間たちの様々な苦労が積み重ねられています。バザー活動の手法を述べると、次のようなものです。
 まず、商品にするための物資は主に仲間たちによって、提供していただける多くの支援者の元へ取りにいったり、日々あちこちから拾い出してきたりして集めます。それを仲間たちの手で整理し、保管しておきます。出店の際にはその都度、そのイベントの客層を考えて商品を選り分けます。
 バザー当日は早朝に集合し、大抵の場合、出店会場まで仲間たちがリヤカー、台車、自転車などで重い物資を運んでいきます。支援者の自動車が不足しているためです。会場に着いたら、やはりその日の客層を考えて、仲間たちであれこれ話し合って商品の陳列をします。後は皆でひたすら呼び込みをし、客と交渉しながら次々と商品を売りさばいていきます。
 バザーの売上金は、会場費などの必要経費や今後の「仕事づくり活動」のための積立金を引いて、残りを参加した仲間たちの日当として分配します。分配される日当は、もちろん世間一般の常識からすれば物足りない額ですが、ほとんど現金収入のない仲間にとっては貴重なものです。仲間たちの間には、参加者が多くなって一人一人の取り分が減っても、少しでも多くの仲間に仕事の機会を広げようという、暗黙の了解があります。彼らの中には、自分は比較的現金収入があるからと言って無償で参加する仲間もいます。


 「仕事づくり活動」にご支援を! 

 このようなバザー活動の手順の一つ一つには、私たちが当初「仕事づくり活動」に込めた目的、すなわち野宿の仲間たち自身による熱意ある主体的な行動と、彼ら同士の仲間づくりの進展、この2点を明らかに認めることができます。この意味では、これまで数ヶ月の活動は理想的な展開を示してきたと言え、私たちは充実感を抱いています。
 しかしながら、現状の「仕事づくり活動」にはまだまだ多くの課題が残されています。バザー活動以外への展開が不十分であること、バザー活動にしても出店回数の増加がままならないこと、商品にするための物資が不足していること、そしてこれらの制約によって、多くの仲間に仕事の機会が行き渡らないことなどが挙げられます。これらの背景には、言うまでもなく支援態勢の力量不足という問題もあります。
 社会の最底辺で困難に直面している野宿者たちに対して、行政が動こうとしない限り、それを乗り越えていくのは野宿者たち自身の力であり、彼らに思いを寄せる市民の支援でしかありません。野宿者たちの熱意を無駄にしたくはありません。私たちの「仕事づくり活動」にご理解いただき、一層のご支援をいただけますよう、よろしくお願い致します。